2024年05月15日 カテゴリー:イリオモテヤマネコNEWS イリオモテヤマネコ 52日間の保護日記 (美原集落 2023年9月~11月) 2023年9月に衰弱で救護されたイリオモテヤマネコの、救護から野生復帰までをご紹介します。 救護 2023年9月19日(火)夕方、西表島民の方から「美原集落に衰弱したイリオモテヤマネコがいる」との連絡を受けました。センター職員が現場にかけつけると、痩せ細ったヤマネコが集落内の民家の木陰にうずくまっているのを発見しました。健康な個体の体重は約3~5kgといわれていますが、この個体は救護時に約1.9kgしかなく、あまりに痩せて小さく見えたため、発見者や職員が仔ネコかと見間違えるほどでした。保護のために職員が近づくと、威嚇はするものの全く逃げる様子がなく、さらには片目も見えていない様子でした。 9/19発見時(提供:水と土 影山謙太氏) 9/22収容後の様子 治療・リハビリ 診察したところ、成獣のメスであることが分かりました。重度の栄養失調状態で、目のほかに、額、右耳、下顎や足にも原因不明の古傷がみられました。保護したあと、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部の獣医師さん、看護師さん方に処置をしていただき、センター内の施設にて治療を開始しました。当初はぐったりしている様子で、突然呼吸が荒くなったりと、かなり危険な状態が続きました。ICU(集中治療室)への収容など、先生方による懸命な治療の甲斐あって、少しずつ容態が安定しました。食べる餌の量も次第に増え、栄養状態が改善されたことで、額や顎の傷も回復し、ケージ内でさかんに動き回るようになったことから、10月19日(救護日から約1ヶ月後)に同施設内の大きい飼育室へ移動しました。 10/26飼育室での様子 10/21飼育室での様子 その後も順調に回復し、運動機能に問題が無いことが確認でき、野生復帰のめどがたったことから、11月7日に野外のリハビリケージに移動しました。実はこの野外のリハビリケージは令和3年に完成したもので、今回が初収容でした。初めての収容で、リハビリケージ内で想定外の事故が起きたりしないかを確認するため、職員が交代で夜通し監視を行いました。リハビリケージ内には3カ所に監視カメラを仕掛けてあり、人間との接触を最低限にするために監視はカメラ越しに行ったのですが、カメラに写らない死角にヤマネコが移動し、居場所が分からなくなったときには、なにか事故があったのではないかとヒヤヒヤする場面もありました。 幸いなことに大きな事故はなく、野外のリハビリケージ内でも元気に活動する様子が見られたことから、野外リハビリケージへ移動した2日後の11月9日に放獣することが決まりました。救護当初1.9kgしかなかった体重は、最終的に3.5kgまで増えました。 11/7 野外リハビリケージでの様子 野生復帰 センターで52日間(1ヶ月21日間)の治療・リハビリを経て、11月9日(木)の朝、救護場所付近の森の中で無事野生復帰を果たしました。移送用ケージの扉を開けた途端すぐに飛び出し、元気に走り去っていきました。 11/9 放獣時の様子 (提供:NPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部) センターに連絡をくださった発見者の方、治療に尽力いただいたNPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部の先生方、本当にありがとうございました。野生復帰からはやくも約6ヶ月経ちましたが、島民の方から、この個体と思われるヤマネコの目撃情報を何件かいただいており、元気に暮らしているようです。今後も道路や集落の近くに出てくる可能性は大いにあります。どうか地域のみなさまで見守っていただきますよう、引き続きよろしくお願いいたします。