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前良橋で救護したヤマネコが野生復帰しました

2024年10月に衰弱した状態で救護されたイリオモテヤマネコが野生に復帰するまでをご紹介します。

救護

2024年10月18日(金)夕方、島民の方から「前良橋の欄干で、足をひきずったヤマネコがカラスに追われている」との連絡を受けました。

センター職員が現場にかけつけると、車道脇に腹ばいになってじっとしているヤマネコを発見しました。人が近寄ると逃げようとするものの、少し移動してまたじっとしていたのでしばらく様子を見ていました。片目が不自由な様子でかなり痩せている状態であったため緊急的に救護をしました。その日のうちにNPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部の看護師さんや、地元の野生動物ドクターさんに診察していただきました。

10/18発見時

治療

診察をしたところ、昨年9月に救護した成獣のメスで2度目の救護であることが分かりました。今回この個体がいた場所は前回救護された場所から5kmほど離れており、通常であればメスは1~2㎢の範囲で定住生活をするため、これほど離れた場所で発見されたことに驚きました。

血液検査の結果、貧血や栄養不良が確認され、9月に救護した時とほぼ同じく体重が1.97kgに減少していました。また、全身を確認してみると、幸い大きな怪我はないようです。脱水・低血糖状態を改善するために点滴をすると、当日中に食事を摂るようになりました。

10/20収容後の様子

その後2,3日は餌を食べ順調に体重が増えるかと思われたのですが、下痢の症状が出てくるようになると食欲がなくなってしまいました。経験的にヤマネコの食欲が低下するとかなり危ない状態であると言われており、状態が心配されました。

再度獣医師さんに診察いただき、懸命な治療の甲斐があり、食欲が戻り下痢も改善されました。その後の検査では、栄養状態も改善し、体重も順調に3kgほどにまで増えてきたことから、広い飼育室へ放して、野生復帰に向けてリハビリを行うことになりました。

リハビリ

以前の救護時より高齢であることが推察されていましたが、衰弱の原因がはっきりとわからず、2度目の救護であったため、放獣してもまた救護されてしまう心配がありました。そのため、以前から確認されていた①片目の視力を失なっていること、②後ろ足に古傷が見られたことが、野生で生活する上で障害になっていないか調べるためにいくつかの試験を行いました。

 

1.歩行状態

飼育室内に自動撮影カメラを設置し、ヤマネコの動きを確認しました。歩行の様子やジャンプする様子が確認され、大きな問題はないと判断されました。

※鳴き声あり

2.視力

動物は人間のように視力検査を行うことはできません。そのため、障害物をきちんと避けて歩行しているかを確認することで、物が見えているかを判断しました。写真のように飼育室に様々な枝を配置しました。感覚で物の配置を覚えてしまう可能性もあることから、毎日配置を変えて検証しました。歩行状態の確認と同様に自動撮影カメラでヤマネコの動きを確認しました。

枝で障害物を組んだ様子。緑の丸は自動撮影カメラ。動くものに反応して撮影を開始する。

枝を避けている様子 ※鳴き声あり

撮影中は自動撮影カメラのフラッシュが点灯するので、光に向かってカメラに寄ってくることから光を感じる視力はあるようです。

3.生き餌をつかまえる能力

野生下で餌を捕まえる能力があるか判断するために、生きたカエルを飼育室に放して確認を行いました。こちらは飼育室にカエルを放した途端に、大きめのカエルをくわえました。

 カエルを捕まえた直後の様子

以上の試験を経て、野生でも自立で生活ができそうだと判断しました。

野生復帰後も追跡できるよう発信機付きの首輪を装着しました。

12/9 野生復帰直前の様子

野生復帰

センターで51日間(1ヶ月21日間)の治療・リハビリを経て、12月9日(月)の夕方、この個体の行動圏として確認されている森の中で放獣しました。移送用ケージの扉を開ると駆け出し、森の奥へと去って行きました。

センターに連絡をくださった発見者の方々、治療にご尽力いただいたNPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部の先生方、本当にありがとうございました。

今後も集落や道路付近にやってくる可能性があるため、このヤマネコを目撃した際には情報をお寄せください。

黄色く光る首輪が目印です。

 

また、万が一、事故ケガをしているところを発見したらヤマネコ緊急ダイヤルまでご連絡いただきますよう、よろしくお願いいたします。

ヤマネコ緊急ダイヤル

0980 – 85 – 5581

みなさんからの情報をお待ちしております

イリオモテヤマネコの事故対策

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情報を元に作成しています

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