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イリオモテヤマネコが野生復帰しました! (大富集落 2024年4月〜5月)

2024年4月に衰弱した状態で救護されたイリオモテヤマネコが野生に復帰するまでの経緯をご紹介します。

救護

2024年4月6日(土)昼、島民の方から「大富集落の鶏小屋でイリオモテヤマネコが倒れている」との連絡を受けました。

センター職員が現場にかけつけると、家禽小屋の中にうつ伏せのままぐったりとしているヤマネコを発見しました。人が近寄っても動く様子がなく、すぐに生死を判断できないほどに衰弱している状態で救護にいたりました。救護して移送用ケージに入れる際にもまったく抵抗することもなく、危険な状態であったため、すぐにNPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部の獣医師さん、看護師さん方に診察していただきました。

 

4/6発見時

治療・リハビリ

診察をしたところ、成獣のオスで、2024年2月に集落内の倉庫に迷い込んで所有者の方から連絡を受け、一度救護したことのある個体であることが分かりました。重度の脱水状態で、2月に救護した時と比べても体重が減少しており、かなり危険な状態でした。また、全身を確認してみると、右前肢に皮膚がすり切れたような傷(裂傷)がありました。

脱水・低血糖状態を改善するために点滴を開始すると、ほどなくして意識がしっかりし始め、当日中に食事を摂るようになりました。かなり空腹の状態だったようです。診察後は酸素濃度の高いICU(集中治療室)へ収容しました。

/6収容後の様子

写真をよく見ると首輪がついています。この首輪は長年行っているモニタリング調査で標識としてつけているものです。このヤマネコは2018年に初めて確認された個体で、当時すでに成獣であったことから7歳以上と推定されています。野生下での寿命が9歳くらいと言われているヤマネコとしては高齢です。そのため右前肢の裂傷が治るまでに時間がかかるのではないかと思われました。

 

その後、食べる餌の量は順調に増え、栄養状態が改善されたことで、傷口も徐々に小さくなってきました。1ヶ月ほど経過したころには、顔つきがしっかりしてきて、給餌や掃除をする職員に対して威嚇するほど元気になりました。

5/9 威嚇をしている様子

 

そして、傷口が完全に塞がったことを確認し、救護から日38日後の5月14日(火)、野生復帰に向けて大きい飼育室へ移動しました。飼育室へ移動する際の診察では、うなり声を上げて抵抗するなど、救護当時にぐったりしていたことを思うとこの短期間での回復具合に感心してしまうほどでした。また、救護した時に2.53kgだった体重はその頃には4.49kgに増加しており、首輪がきつくなっていたため、取り外すことにしました。

/14前肢の傷が塞がっている様子

5/14飼育室での様子

野生復帰

センターで41日間(1ヶ月10日間)の治療・リハビリを経て、517日(金)の夕方、この個体の行動圏として確認されている森の中で放獣しました。放獣場所までは移送用ケージでヤマネコを運び、放獣場所でケージの扉を開けて森の中へ帰します。ケージを開けたらすぐに飛び出す個体も多いのですが、今回のヤマネコは回復してからは人に対して威嚇することが多かったにもかかわらず、放獣当日はいつもと違った様子を敏感に感じ取ったのかおとなしくしており、移送用ケージの扉を開けてもしばらく落ち着いていました。ケージを傾けるとやっと飛び出し、元気に森の奥へと走り去っていきました

5/17 放獣直前の様子

5/17 放獣の様子

センターに連絡をくださった発見者の方、治療に尽力いただいたNPO法人どうぶつたちの病院沖縄 西表支部の先生方、本当にありがとうございました。

 

〜みなさまへお願い〜

今回の個体のように、衰弱したヤマネコは野生の生き物をうまく捕まえることができず、人が飼育しているケージに囲われた動物を狙うことがあります。実は、今回のヤマネコを救護した鶏小屋の中には鶏の羽根が散乱していました。小屋内で飼われていた10羽以上の鶏が襲われて命を落としています。小屋の壁や天井に、にぎりこぶし程度のすき間があると、ヤマネコが忍び込む危険性があります。飼育している動物たちをヤマネコから守るためにも、飼育小屋の定期的な点検と修繕をお願いいたします。ヤマネコに入られないための飼育小屋作りに関してご不明な点がございましたら、西表野生生物保護センターまでご連絡ください。

 

 

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